電磁情報学研究室とは

   電磁情報学研究室(Electro-Magnetism and Informatics Laboratory:EMILAB.)のホームページをご覧いただきまして,ありがとうございます.当研究室では,我々の生活環境や製品設計において扱う電磁気や音響,およびその周辺の物理現象を,情報学の力によって解明する研究に取り組んでいます.電磁情報学研究室という少し変わった研究室名は,この研究手法からとって名付けています.研究名を「計算科学に基づく数値解析技術の統一的構築と電気システム工学における利用技術の研究」として掲げています.もう少し具体的には「高度な計算機と計算アルゴリズムを駆使するシミュレーション技術の開発とその電気システム工学への適用」というように表現出来ます.


シミュレーションとは

   工学や理学において観察される現象を明らかにする,つまり原因を突き止め原因からより一般的な現象(これを法則と呼びます)を予測するためには,既存の定理や法則,または既存の複数のそれらを組み合わせ理論構築する,あるいは実験を実施するなどによって現象を把握するという手法が従来とられてきました.この理論と実験という理工学分野の研究手段として用いられてきた2つの柱に加えて,「シミュレーション」という第3の柱が注目を集めています.このシミュレーションの特徴は,電磁気現象などの物理現象や,電磁気,熱,音といった異なる複数の物理現象の相互作用を,計算機を利用することにより明らかにするという点です.物理現象を明らかにするためには,物理現象を支配する方程式,多くの場合偏微分方程式を解くことが必要となりますが,これらの偏微分方程式は球対称や円筒対称といった単純な条件でのみ解くことができ,それ以外はまず解くことができません.つまり,モーターや人体の内部,生活環境といった複雑な構造物や空間において発生する物理現象を明らかにするためには,計算機とその上で動作するソフトウエアにより,偏微分方程式を数値的に解く必要があります.より具体的に述べるなら,偏微分方程式を数学的手続きにより線型方程式(連立1次方程式)に置き換え,この線型方程式を行列演算アルゴリズムによって解くことで,間接的かつ近似的に偏微分方程式の解を得るのです.これが数値解析と呼ばれるものです.数値解析は計算機の出現よりも前に誕生し,計算機の発達・普及とともに進化してきました.


数値解析とシミュレーション

   我々が扱う複雑かつ大規模な構造物や空間を解くべき対象とする数値解析は,基本的な数値解析から一歩押し進め実現象を再現するという意味を込めて「シミュレーション」と呼んでいます.どのようにその一歩を押し進めるかは,様々な選択肢がある中で,我々は特に複雑かつ大規模な構造物や空間を再現する「高度な物理・数理モデリング」と,それを計算可能とする並列化などの「高度なアルゴリズム」によって実現しようとしています.これを我々は研究テーマとして示す「計算科学に基づく数値解析技術の統一的構築と電気システム工学における利用技術の研究」によって実現することを目指しています.
   このように物理学・数学・情報学を背景としたシミュレーション手法は,正しいモデリングと境界条件・初期条件設定のもとで,実験と同等の物理的な正確性を有する解を得ることができます.
   ただし,偏微分方程式をあくまで「近似的に解く」のが数値解析であり,その解には必ず誤差が含まれます.従って,実現象を再現する「シミュレーション」も,数値解析をベースとしている以上,当然誤差はついてまわります.
   一方,解く線型方程式の規模が大きくなればなるほど,高精度な解が期待できます.しかしながら,一般に線型方程式の規模が大きくなればなるほど,計算量・メモリ量が増大し,また,線型方程式の反復解法の収束性への影響などにより,計算自体が困難になります.つまり,高精度の解を得ることと計算のしやすさ(解の求めやすさ)はトレードオフの関係にあります.ここがシミュレーションの難しいところです.


高精度なシミュレーションを実現するためには

   高精度なシミュレーションを実現するためには,

          1.着目する現象の正確な把握
          2.その現象をシミュレーションで扱うための精緻な数値モデリングの実施
          3.空間・時間双方に高解像度な解の計算が可能なアルゴリズムの開発やスーパーコンピュータなどの並列計算機の利用技術

が必要となります.高精度なシミュレーションは一朝一夕に実現するものではなく,上記3点の継続的な検討・改善の積み重ねが要求されます.この過程が非常に泥臭く,研究に取り組む学生・研究者は皆大変な思いをしながら目の前にある障壁を一つ一つ越えてゆき,最終的には高精度シミュレーション手法の実現というゴールにたどり着きます.


さいごに

   どのような分野の研究であっても,研究を成し遂げるためには,例外なく大変な努力が必要となります.シミュレーションの研究も一見軽やかでとっつきやすそうと思えます(私も研究をはじめる前はそのように思っていました).しかし,いざ取り組むと奥が深く,また多くの困難があることがすぐにわかるでしょう.シミュレーションは工学・理学・情報学をまたにかけて研究する,総合科学ともいうべき新しい研究分野です.従って,理論や実験を主な手段とする研究分野と比較して研究成果の蓄積が少なく,それが研究を進めるうえで困難が多いことの要因と考えられます.しかし,困難が多いということの裏を返せば,大きな研究成果が得られることが期待出来ることでもあります.またそれが様々な分野に波及する効果が非常に大きいことも,研究のやりがいに繋がっています.
   このページを見た学生の皆さんが,少しでも「シミュレーションって面白そうだ」とか「やってみたいな」などと感じてもらえれば嬉しく思います.是非教員室・研究室へ見学に来て下さい.その際に以下のメールアドレス宛にアポイントメントをいただければ武居が確実に対応できます.また,研究室への配属後は,学部卒業で就職を希望する,または修士課程・博士課程へ進学を希望するいずれの場合においても,社会で立派に活躍出来,将来を嘱望される人材となるよう,武居がゼミや研究打ち合わせ等を通して鍛えて差し上げます.
   またこのページをご覧の企業様におかれまして,シミュレーション技術に関してご興味がありましたら,どうぞご遠慮なくお問い合わせ下さい.共同研究・受託研究のお申し出も歓迎致します.


2017年7月11日 武居周
takei[at]cc.miyazaki-u.ac.jp